ノムリエphoto575

2015年 07月 04日 ( 2 )

【まつやま俳句ポスト365  兼題:南風(みなみかぜ)/天選】


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◆ 砂売りが幾度も通る南風(みなみかぜ) / 田中ブラン (*写真はイメージです)


   (選者)夏井いつき組長のコメント :

 季語「南風」を、明るく清々しいイメージで受け止める人たちが世間には多いのですが、実は「湿気を含んだあたたかい風」であることや「時に強烈に吹く」ということは、この季語の本意として押さえておきたい事項です。「南風」をリアルに描いた句を選ぼうと思っていたのに、この一句がどうにも心から離れてくれません。深読みしていることを承知で、今週はこれを「天」に推させて下さい。(笑)。
 「砂売り」とはどんな仕事なんだろうと思ったとたん、安部公房著『砂の女』の世界にワープしてしまいました。海の近くの砂丘に昆虫採集にやって来た男が、掘られた砂の穴の中に住む女の家に囚われてしまう、という物語です。女の家は、蟻地獄みたいな穴の中にあります。出入りするための縄梯子は、外の村人たちによってはずされています。どんどん砂が崩れてくるので、砂掻きをしないといけない家という状況の怖ろしさ、そこに住む女の砂嵐に爛れた目の怖ろしさが、強烈に脳裏に焼き付いています。
 勿論、小説の中に「砂売り」はでてきません。が、『砂の女』たちが掻きだした砂を売り歩く男がいたかもしれないという幻想に、季語「南風」の皮膚感が生々しく蘇ってきました。
 あれ、今日は「砂売り」が幾度も幾度も通ることだねえ。今日は「砂売り」から砂を買う必要はないんだけれど、「南風」に吹かれた砂が家の中にもしきりに入ってくるよ。砂が「南風」の湿度で肌にじっとりとくっついてくるよ。潮の臭いと汗の臭いが雑じるよ。舌がザラザラしてくるよ。砂の味がするよ。ふと窓の外を覗くと、我が家が蟻地獄の砂の中にあることに気付く……そんな妄想。
 「砂売りが通る」(Le marchand de sable passel)とは、うつらうつら眠くなるというフランスの慣用句(砂売りが眼に砂をかけると人が眠る)なのだそうです。『ピーターパン』の物語では妖精のティンカーベルが、子どもたちに眠りの砂をかける場面もありますね。「砂売りが幾度も通る」うちに、「南風」の熱と湿度と砂にまみれたまま眠りこけていく自分を想像すると、さらに怖ろしくなってきた作品でした。

    組長!素晴らしすぎるコメント、本当に有難うございます♪  ワタクシ、一生ついて行きます!(笑)



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* まつやま俳句ポスト365 兼題:南風(みなみかぜ) 「天」 (夏井いつき選)




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by champagneman | 2015-07-04 18:17 | フォト575

【ハイポ備忘録/4-6月】

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あたたかや鼻息荒き河馬の夢


地下街にブルース満つる春の月


黄金週間朝の市バスは軽やかに


初夏やヴィーニョヴェルデの微発泡


釣堀に猫と旅人初夏の風


滴りや微動だにせぬ修行僧


つんとくる異動内示と高菜漬


六月の風が伝える詩人の死


叱られた猫と見ていた金魚玉


海南風ライトスタンドより怒濤



                          
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by champagneman | 2015-07-04 08:21 | フォト575